家賃保証会社には現在、規制法も監督省庁もなく、「取り立てがやりたい放題」と指摘される問題もあります(2016年3月現在)。
このような問題がありながら、どうして規制する法律が整備されないのでしょうか?
たとえば貸金業(サラ金・カードローン等)であれば、貸金業法で取り立て行為が厳しく規制されています。
また、銀行ローンは銀行法による規制があり、金融庁により監督が行われています。
携帯電話料金に関しても、総務省が監督省庁として、料金体系などが不当にならないよう指導しています。
もちろん不動産業についても、国土交通省が監督省庁となり、借地借家法などで規制が行われています。ですが家賃保証会社は不動産業者ではないため、こうした法規制や省庁の監督が行き届きません。
だから、「家賃保証会社はやりたい放題」とまで言われてしまうんですね。
実は、家賃保証会社による取り立て行為の法規制は、法案が作られ、国会で審議されたことがあります。
通称“追い出し規制法案”と呼ばれたもので、2010年2月23日、当時の民主党(現在の民進党)政権により閣議決定され、同年4月に国会に提出されました。
国会での審議が行われたものの、同年12月9日の臨時国会終了をもって、継続審議ナシとして、この“追い出し規制法案”は廃案になりました。
その後、同様の法案が審議された事はなく、2016年3月現在でも、家賃保証会社に対する規制法は無い状態です。
では、なぜ家賃保証会社を規制する“追い出し規制法案”は廃案となったのでしょうか?
この問題について、考察してみたいと思います。
追い出し規制法案の全文を確認すると、次のような内容だったことがわかります。
https://www.mlit.go.jp/common/000058035.pdf archive より
この法案が審議されていた2010年当時、ネット上でも、関係者らによる賛否両論が沸き起こっていました。
それらのネット上での議論についても、概要をまとめてご紹介します。
『追い出し規制法案を可決し、家賃保証会社を法規制すべき』という立場の意見です。
この“追い出し規制法案”の内容は、2006年に成立した貸金業法における、貸金業者(サラ金など)の取り立て行為に対する規制と、規制内容はほとんど変わりません。
「サラ金の取り立ては規制するのに、家賃保証会社の取り立ては規制しなくていいのか?」
という議論もあり、「サラ金と同じように規制すべき」という考え方です。
また、当時は悪質な家賃保証会社による脅迫的・威圧的な取り立て行為が社会問題化しはじめており、そうした問題の最前線に直面する弁護士等からも、この“追い出し規制法案”の成立を望む声が上がっていました。
『追い出し規制法案を否決し、家賃保証会社を法規制するべきではない』という立場の意見です。
こちらは主に不動産オーナーや管理会社、家賃保証会社など、規制対象となる業界からの意見が目立ちます。
「悪質な滞納者に、安心して滞納して下さいと言うようなもの。」
「そもそも家賃を滞納しなければ良い。家賃を滞納したほうが悪い。」
「他の業界で言えば、食い逃げ犯や万引き犯を保護するようなもの。」
といった意見です。
こちらも当時の社会背景をみると、悪質な家賃保証会社が増える半面、不況による家賃滞納者も増加しており、滞納家賃の回収に苦しむ賃貸業界の声もまた、身に迫るものがあります。
また、この法案が可決・施行されると、最初から支払う気のない「悪質な滞納者」まで守る結果になってしまう…といった危惧の声もありました。
結局、この“追い出し規制法案”は廃案となりました。
結論として、反対派の意見が通った形です。
ですがその後も、家賃保証会社による取り立て行為に対し、「やりすぎではないのか?」といった声も上がり続けており、裁判もたびたび行われています。
こうした2016年現在の状況をみると、「家賃保証会社に対し、なんの規制もしない」という結論が、本当に正しかったのか、改めて考える必要もあると思います。
最後に、これは完全な私見ではありますが…。
賛成派の意見も、反対派の意見も、どちらも納得ができます。
ですが、例えば反対派の意見として、「他の業界で言えば、食い逃げ犯や万引き犯を保護するようなもの。」といった意見もありますが…。
食い逃げ犯であっても、捕まえて過剰な暴力を振るえば、違法行為になります。
万引きや泥棒の被害にあったとしても、その犯人を自分で見つけて、盗まれたものを勝手に取り返したら、違法な自力救済になります。
このような「過度な反撃、違法な自力救済」が、他の業界では、社会問題になるほど行われてはいません。
一方、家賃保証業界では、社会問題になるほど頻発しています。
他の業界であっても、違法な自力救済や、やりすぎな反撃が常態化してしまえば、やはり法律による規制が入るのは「致し方ない事」ではないでしょうか?
自浄作用を働かせることができなかった、その業界全体の責任と言えます。
家賃保証業界は、十分な自浄作用を働かせてきたでしょうか?
もしもそれが不十分であるならば、改めて、家賃保証会社に対する法規制を検討する必要が、あるのではないかと思います。
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